2025年度‟東京て・あーて塾”を開催しました
2025年11月30日(日)、”東京て・あーて塾”を日本て・あーて推進協会と健和会看護部共催で開催しました。
今回のて・あーて塾は、看護の喜びややりがいが見出せるようにとの思いで企画し、全国から56名の方々に参加いただきました。
メインテーマは「今こそ伝えたい看護の喜び~看護だからできる生命力の回復~」。
3名の講師にご講演いただいた後、参加者とのディスカッションへと続き、看護への思いを共にした1日となりました。
看護の真の魅力を探る喜び〜創造的実践の言語化から〜
最初の講演は、川嶋みどり代表理事による「看護の真の魅力を探る喜び~創造的実践の言語化から~」。
看護の魅力、看護実践の経験の意味、看護専門職としての真価は技術であること、言語化の大切さ、そして「て・あーては自然の回復過程を調える」といった内容で始まりました。
ナイチンゲールの「看護は人生の中の最高の喜び」との言葉を引きながら、看護師70余年の経験から看護の真の魅力を探る体験を、とてもわかりやすくお話しいただきました。

看護の原点として、「看護は専門職である」と叩き込まれた学生時代があり、背伸びしながらそれを自らに言い聞かせた日々があったこと、卒後まもなくの実践を通して確信した看護本来の働きの経験が、その核になっていること。
そして、看護の魅力は、「他人がどう見ようと看護が大好きである」という実感、そしてそれは看護師本来の看護に集中してこそもたらされるものであり、少々の困難や障害があってもやり抜く意思の力から生まれる──その力強い言葉から、川嶋代表の一貫した姿勢を感じました。
そして、看護の経験を語り合うことは看護の魅力を深め、それを意識して言語化することで経験知になっていくこと、その取り組みが技術の本質を形づくることにつながる、とのお話がありました。
日ごろの看護実践について「あれ?」「おや?」「なんで?」を語り合う時間を、大切にしたいと感じました。

最後は”て・あーて”について。”て・あーて”の基本である、そばにいて(presence)、触れて(touch)、聴く(listening)の3要素が、患者の自然の回復過程を調えることにつながっています。
「臨床で‟て・あーて”の実践と普及をさらに進めていきましょう!」 との呼びかけは、参加者の心に強く響いたのではないでしょうか。
参加者のアンケートから:
●技術を学び、反復訓練し、自分のものとして実施すること。それを人に伝えていく。その努力を惜しまないことが大切
●経験を具現化する。言語化して文字に残していきたい
●触れるケアにどれほどの力があるのか、それを実践できる専門職である看護の魅力を改めて感じられた
諦めない! “て・あーて”で患者さんの可能性に挑戦~生きる喜び、治る力を引き出す看護~
続いての講演は、「実践編1:看護だからできる生命力の回復」として、美須賀病院看護師の大仁田雅子さんによる「諦めない! “て・あーて”で患者さんの可能性に挑戦~生きる喜び、治る力を引き出す看護~」。美須賀病院での”て・あーて”の実践について、お話しいただきました。

大仁田さんが‟て・あーて”に関心をもったきっかけは、2014年の‟て・あーて塾”に参加された重見美代子総師長がベットサイドで行っていた‟て・あーて”を体現した看護。
そのケアを見様見真似で始めたところ、患者さんの表情が穏やかになるなど、これまで見たことのない様々な変化に飲み込まれていったことのこと。
自らも2015年の‟愛媛て・あーて塾”に参加され、熱布バックケア、ノーリフティングケア、爪マッサージや爪切りなどを、日々の看護に導入されました。
それらの実践が事例を通して紹介され、患者さんの反応や病院スタッフ間での共有など、”て・あーて”の実践の継続がもたらす成果が伝わってきました。

病棟での成果を外来でも活かせるように、「て・あーて(手や下肢のマッサージ)を始めます」との案内を掲示し、外来でも”て・あーて”のケアをスタートさせたそうです。
さらに、‟て・あーて”を実践したいと全国から研修や実習の申し込みが続いており、その様子も紹介されました。
日々の‟て・あーて”の実践から、患者さんの持つ可能性を信じて挑戦し続ける看護を提供したい、と力強く話された大仁田さん。その表情からも、”て・あーて”の実践を通して看護の魅力を実感されていることが伝わってきました。
参加者のアンケートから:
●川嶋先生の‟て・あーて”を具体的に実践している看護の実際がよくわかった
●たくさんの事例から、‟て・あーて”の大切さがすごくわかりやすく伝わり、取り入れたいと感じた
●ケアの本質を実践しており、患者さんの生きる喜び、自然治癒力を大事に看護しているところが学びになった
●組織全体で‟て・あーて”を行っているところが素晴らしい
これがワタシの生きる道!~触れあい・分かちあい・喜びあう看護という仕事~
最後の講演は、「実践編2:看護だからできる生命力の回復」として、株式会社ナースエナジー管理者の亀井紗織さんによる「これがワタシの生きる道!~触れあい・分かちあい・喜びあう看護という仕事~」。

亀井さんは、2012年に訪問看護事業などを運営する株式会社ナースエナジーを設立されました。
起業に際しての予期せぬ苦労を一つひとつ乗り越えて確実に形にしていく姿勢、訪問看護を通して気づいた社会課題を看護師だからできる社会貢献に広げて開拓してきた経験を通し、一貫して「看護とは何か」「今やるべきことは何か」の問いと向き合いながら歩んでいる姿が伝わってきました。
紹介されたエピソードは、強く心動かされるものばかりでした。
生命力の回復を果たす「エナジーサイクルを回せ!」をキーワードとした実践が、「正しい看護を提供すれば、まだある寿命なら必ず生命力は蘇る」との確信につながっていることを目の当たりにしました。
「口から食べるのは難しい」と病院から申し送りのあった方の7割が食べられるようになり、終末期と言われた方の3割が6か月以上ご存命とのこと。
重ねてきた取り組みから、「看護には生命を左右する力があることを、今こそ肝に銘じなければならない!」と、「私達がすべき看護とは何か」を今ここでしっかりとらえ直す必要性を感じました。

「100%看護独自の力を発揮すれば、患者さんはHappy、看護師もHappy」「ナースたちよ! 力を解放せよ! そしてHappinessの連鎖をつないで参りましょう」との亀井さんならではの呼びかけに、参加者の皆さんも「Happyをめざして日々の看護を行いたい!」と強く感じたのではないでしょうか。
参加者のアンケートから:
●多くの困難を経験しながらも患者さんや周りの人々とつながり続け、看護の道に献身し続ける姿勢を貫かれている。その生き方と想いは心に強く響き、看護に対する考え方や覚悟を改めて考えさせるものでした
●病院で行っている当たり前を本当にこれでいいのかと振り返り、責任者として目をつぶらずに倫理的感性を鍛えていかなければと感じた
●事例の話に胸を打たれた。看護は生命を左右する力があることを肝に銘じなければならない。その通りだと思った
講演後に講師の先生方とのディスカッションの時間を50分間、設けました。
質問や意見が次々と寄せられ、「もっと語り合いたい」との思いを残しながら、終了となりました。

3人の講師のお話から、改めてナイチンゲールの考えを表した言葉の重さについて、考えさせられました。
看護婦は看護に専心すべきである。
真の看護とは何であり、真の看護ではないものは何であるかを明確にする必要がある
──今ここで、一人ひとりが問い直すことが大切だと感じました。

(八木美智子 記)
2025年12月29日
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