東京て・あーて塾 を開催しました ─1日目─

2024年11月16日と17日、日本て・あーて推進協会と健和会看護部との共催で「東京て・あーて塾」を開催。北海道から鹿児島まで、全国から34名の方にご参加いただきました。

メインテーマは「て・あーての基本 触れるケア~心の声を聴き、心地よく触れるケア技術を高める~」と題して、2日間連続での対面講座。Web開催とは異なる参加者間の交流もあり、楽しく充実した研修となりました。

今回は、2日間の研修のうち、1日目の様子をお伝えします。

1日目のプログラムは、当会代表理事、川嶋みどりによる「触れて心の声を聴く看護師の手」、そして野の花診療所所長の徳永進先生による「患者さんの心の声を聴く」の講演、その後、参加者による感想交流・ディスカッションと続きました。 

触れて、心の声を聴く看護師の手

川嶋代表の講演は、て・あーての思想である、触れて癒し、励まし、慰め、心通わせる、を基に「人間の手の多様性」「て・あーての初心」「看護師の手の有用性」「触れて聴くいのちの声」といった4つのテーマに沿った内容でした。

冒頭、現場の看護について、パルスオキシメーターに頼りきることへの疑念(苦しいと訴えても数値だけ見て大丈夫と何もケアをせず、冷たくなった手足に触れない看護)について話されました。
確かに、コロナ禍を経て一段とパルスオキシメーターは日常的に用いられるようになり、数値だけをみて大切なケアがおろそかになる、という面があるように思います。
また、「乾いた温もりのある手の感触は忘れられない」と、手術の後、凝り固まった背中に差し入れられた夜勤看護師の手について、看護の大先輩が残した言葉が紹介され、手で触れることの原点を忘れないでおきたいと思いました。

参加者アンケートからも、「手を用いたケア・看護の手の有用性を再認識した」「看護のやるべきことは何か…看護の原点を忘れない」、そして「手で聴くことの可能性や、手の役割の多様性」などが印象に残ったこととして挙げられており、これらの学びを基礎教育や実習病院に伝えていきたいとの思いが伝わってきました。

最後に、川嶋代表が作詞した「触れて癒すナースの手」の合唱を聞き、看護の本質、そしてそれぞれの「看護の手」への思いをめぐらせて終了となり、徳永先生の講演へとつながりました。

患者さんの心の声を聴く

徳永進先生の講演は、20の項目に沿って「聴く」をテーマにお話しいただきました。
お話の多くは臨床現場での患者さんやその家族、看護師や周りの方々とご自身とのリアルなやり取りのエピソードでした。

点滴をしようとしたら、「それじゃない、今日の夕方、すっとやってもらえる(死なせてもらえる)薬を…」と言う飲食を拒んでいる97歳の患者さん。
「“がん”と聞いても私は泣けない、なぜでしょう?」と尋ねる患者さん。
収容された隔離施設から出られることになっても、自分が死んだことになっていれば皆が幸せだからここで良いと言う、らい病患者さん……

重たいテーマばかりなのに、なぜか笑い、涙が流れ、感動する──重苦しさを感じなかったのは、徳永先生の臨場感のあるユーモアあふれる語り口調によるものと思います。
そこには先生の「生き方哲学」のようなものを感じました。
短いエピソードの数々から、聴くことの本質を学べた講演でした。

参加者のアンケートには、「心の声を聴くことの難しさ、でも聴いていきたいという思いが伝わってきました」、また講演で印象に残った徳永先生のことばとして、
・聴診器ではなく聴心器
・一番大事なことはonly listening
・手でアース
・新人看護師のほうが患者との溝は埋められる、未熟であることが声を聴くときに大事
……などが書かれていました。

講演終了後、グループに分かれて「心の声を聴けた(または聴けなかった)体験、講演の感想など」をテーマに交流の時間を設けました。
参加者の背景は、臨床で従事する看護師のほか、看護管理者、新人看護師、看護教員、学生、看護以外の職種など様々でしたが、どのグループからも、和やかに、活発に話し合われている様子が伝わってきました。
新人看護師や看護学生が、グループでの話し合いの中で自らの思いを語る姿に「看護の未来は明るい!」と、川嶋代表。
学ぶ姿勢への賞賛とエールの言葉とともに、著書『あなたの看護は何色ですか』が贈られました。

*川嶋代表、徳永先生の講演内容は、雑誌『オンナーシング』(看護の科学新社)15号にも掲載されます。

(大野美知子 記)

                                                      

  

2024年12月24日