8年間にわたるタッピングタッチの種まき

 当協会の八木理事が一部執筆されている書籍『〈ふれる〉で拓くケア タッピングタッチ』(2022年、北大路書房)に書かれた活動の様子の一部をご紹介します。
 腹話術の相棒 “ぽこちゃん” も登場します!

〈ふれる〉で拓くケア タッピングタッチ』から

被災地でのタッピングタッチ

 八木美智子理事がタッピングタッチと出会ったのは2013年、東日本大震災後の被災地活動を行う中でのことでした。
 被災地では、過酷な体験と狭い仮設住宅での生活が続く中でのストレスが重なっており、住民同士で気軽にできて心と体が元気になる体験が必要と思った矢先に、タッピングタッチを体験する機会があり、「これだ!」と直感されたそうです。思ったら即実行!の八木理事です。インストラクターの資格を取得し、タッピングタッチの種まきを始めました。

 宮城県多賀城市の仮設住宅、東松島市の仮設住宅や復興住宅および集会所の健康講座などで、322名の住民にタッピングタッチを行いました。「いつでも、どこでも、誰でもできるタッピングタッチ」は、どこの会場でも歓迎されとても喜ばれました。住民同士が2人1組になって行うことで心の距離が近くなり、ふれあいの体験は疲れている住民の心と体にぬくもりを届けました。

仮設住宅でのタッビングタッチ

 仮設住宅での生活には、平屋で互いに声をかけやすく、近所の様子がよくわかるという利点もありました。しかし、仮設住宅は狭く、プライバシーを保てないためにストレスも大きく、大変な状況にありました。私が関わり始めた頃、仮設住宅でひとり暮らしの方が亡くなったことをきっかけに、ひとり暮らしの方への声かけや誘いあいが進んでいました。

 タッピングタッチの体験会には、いつも10名から20名前後の参加がありました。デモンストレーションで仕方を説明し、それから2人1組となって15分ずつ交代でていねいに行いました。とても好評でした。継続していると、参加者から「談話室に集まったときに、みんなでしようよ」との提案があり、住民同士で行うようになりました。

復興住宅でのタッピングタッチ

 復興が進み、仮設住宅から復興住宅への転居が始まりました。新しい復興住宅は4階建てで日あたりがよく、とても住みやすい環境になりました。いくつかの仮設住宅の住民がひとつの復興住宅に集まり、新しい自治会となりましたが、住民同士の交流が進まず運営が難しい状況でした。
 玄関のドアを閉めたら生活が見えにくく、平屋の仮設住宅のときのような声かけもできなくなりました。ひとり暮らしの方への声かけや集会への誘いも心がけられていましたが、集会への参加は進んでいませんでした。

 そんな中、タッピングタッチの打ち合わせのときに、自治会長から「なかなか新しい人が集まらない、ひとり暮らしの人もなかなか集まらない。せっかくだから新しい人が参加してみたいと思う内容だとありがたい」との要望がありました。私は腹話術もしていましたので、「楽しい腹話術と心と体を元気にするタッピングタッチ」を提案し、実施しました。
 私の相棒の「ぽこちゃん」と大笑いをした後、タッピングタッチでその場は一気に和やかになりました。腹話術との組み合わせは成功し、子どもや新しい参加者が増えていきました。定期的に行っていると、タッピングタッチセルフケアの「腕だけ散歩」の後、参加者の皆さんはすぐに2人1組になって、「準備OKですよ~」の声が出るようになりました。

八木理事とぽこちゃん

     

 被災地支援活動でタッピングタッチの素晴らしさを実感された八木理事は、看護学生や看護師、介護職への種まきも始めました。本会主催のて・あーて塾でも、タッピングタッチを伝えています。
 コロナ禍が長引くストレス状況の中、「そうだ!こんな時こそ自分を大切にケアするセルフタッピングだ!」と、オンラインで友達に呼びかけ、2021年1月から「セルフタッピングの会」を開始、2023年3月には祝200回!となりました。週2回、夜にみんなに会えるのが楽しみ・・・とのこと。
 2021年4月からは、月1回「看護とタッピングを語る会」も始め、全国の看護職のインストラクターとつながって、看護・介護への活用を広げる活動も行われています。
「さあ! これからも、ゆっくり、やさしく、ていねいにケアをしていきましょう!」と、種まきは続きます。

 上記でご紹介した『〈ふれる〉で拓くケア タッピングタッチ』は、タッピングタッチを知りたい!やってみたい! と思った皆さまに、ぜひお読みいただきたい1冊です。

中川一郎 編著
北大路書房 定価3,000円+税

〈中山 記〉

2023年6月26日