こころと体のケア事業─訪問健康相談─(7年3ヶ月にわたる活動を引き継ぎました)

サポートセンターとの連携の構築

「こころと体のケア事業」は、東日本大震災から約3年後の2014年1月から2021年3月まで、東松島市社会福祉協議会からの委託を受けた活動です。

 7年にわたり高齢者や独居世帯を対象に戸別訪問し、健康相談支援を行ってきました。主に矢本東地区と矢本西地区を担当、看護師資格を有する本会理事・会員が2人1組で活動を始めました。

 訪問世帯票と情報をサポートセンターで預かり、土地勘がない中で長距離移動はタクシー、初対面の方々に「血圧を測りましょうか」と話のきっかけを作りながらの訪問でした。訪問後は、センターに戻って、気になったこと、受診を勧めた方が良いかもしれない状況、見守ってほしいことなどを記録して、情報共有に努めました。年数を重ねる中で、困難世帯にはどのような対処が必要か、サポートセンター内だけでなく、東松島市福祉課・健康推進課保健師などと対策を協議できるまでになり、緊急度に応じた対応が迅速になったと実感しています。

サポートセンター

 また、サポートセンターの提案で2016年度から当会看護師とサポートセンター生活支援相談員との2人1組でチームを組む体制に変更しました。生活支援相談員から日頃の生活の様子を聞くことができ、看護師としての視点を伝えるなど、その場での情報交換も円滑になって、対処がより早く、適切になりました。

仮設住宅での訪問活動

研修者と同行訪問

 2014年~2016年、JICA看護管理者研修を受け入れました。震災の体験談と仮設住宅の暮らしや、これからの街づくりについて小野竹一自治会長から話を伺い、同行訪問も計画しました。住民の方々との面談で、震災後の心情や暮らしを実感してもらい、各国の看護管理者の方々にこの訪問活動の意義を伝える機会になりました。

 また、2014年~2015年、日本赤十字看護大学大学院共同災害看護学専攻インターンシップを受け入れました。災害看護学を学ぶ大学院生とともに同行訪問を行い、被災者の生活と健康問題の現状を伝えました。実際に身体ケアを一緒に行ってもらった機会もあり、単に巡回して話を聴いて回るだけの活動ではないこと、その人その時に必要なことを考えて、継続的に関わるつながりの大切さなど、机上では得られない体験が多々あったのではないかと思います。
 毎年、様々な災害が続き、ここでの経験がどこかで活かされていることを願っています。

研修者と同行訪問

被災者を長く見守り続けた生活支援相談員たち

 生活支援相談員の方々と訪問活動を共にするようになって、「〇〇さん、お買い物?」とか、「○○さん、仕事の帰り?」、「久しぶりだけど変わりない」などと、住民の方々に、よく声かけされていることに気づきました。
 隣近所や自治会の付き合いを一切しないAさんも「いつも声をかけてくれて、遠くからでも手を振ってくれるのは○○さんや○○さんだけだよ」と。生活支援相談員の皆さんは、サポートセンター開所当時から関わっており、日々こつこつと地道な行動を重ねてのつながりであると、感動しました。

災害公営住宅での訪問活動

 自治会やシニアクラブのような公的な会、お隣さん的な住民の気配りによってつながるコミュニティ、そして地域の外からの生活支援相談員による見守り訪問、これらの仕組みが一体となって、住民方々の安心が守られています。

活動を振り返って

 被災地の訪問活動に長期間継続的に携われたことは貴重な体験でした。
 被災者が心身ともに復興をなしとげるには、個別的な事情があるにしても、前向きに生きようとする意欲を引き出すことが大切であることは言うまでもありません。私たちは、一人ひとりに寄り添い続けること、心が少しでも和らぐようにゆったりと耳を傾けること、時にはその場で必要な看護援助を実践してきました。

 健康問題が心に影響し、逆に心の不安定さが健康問題を引き起こすことも多く、限られた機会と時間の中で状況を見極め、具体的な支援につなぐことはなかなか難しいことです。見守りが必要とされた方の共通項をみていくと、高齢独居、体力の低下や障害、対人関係が苦手、生活習慣の乱れ、経済的困窮などの要素がみられました。このような手がかりを蓄積していき、観察力を高めていくことが大切です。

 一方で、新たな仲間と支え合い、気遣い合って、高齢でも一人暮らしでも気丈に楽しみを見つけて生活している方々もいました。こうした方たちを、あるときは後押し、温かく見守りを続けることで住民の生きる力が湧いてくるのではないかと思いました。

 このような支援活動は、個々バラバラの動きでは目的を成し遂げられず、遅々としか進んでいきません。この取り組みでは、情報共有や関連部門との連携が円滑になったことで、支援が促進しました。住民からは、見守ってもらうだけでも安心と頼りにされています。

最後に記念撮影(*^-^*)

 サポートセンターでの最後の連絡会では、“これまで頂いた教訓を、新しい形になるとしても継承していきたい”と、活動の意義を共有しました。さらなる発展を心から願っています。

 訪問の道中に撮影したラベンダーです。東松島の皆さまとの出会いとともに、四季折々の東松島の風景も大切な思い出です。

仮設住宅路地のラベンダー(2015年6月撮影)

(大野、平松、中山 記)

2021年6月2日