こころも身体も温まった「佐原て・あーて塾」

2月24日(日)、千葉県の“小江戸”佐原で「佐原て・あーて塾」を開催しました。

地元の看護学校教員や病院の看護師、介護系施設の介護福祉士などを中心に21名の方にご参加いただきました。

午前中の川嶋みどり(日本て・あーて推進協会代表)による講義では、
「手を用いたケアは医学の進歩前から人類の営みの中で自然に用いられてきた。今では触れることさえ消えつつある現状である。病気になった時でも“誰もが生まれてきて良かった生”を全うするためには、ケアの原点である“聴く”“触れる”“手を使ったケア”をして欲しい」
と、て・あーての根底にある思想と自然の回復過程を調える看護の真価について、身近な暮らしや事例を挙げながら熱く語られました。

講義は、開催場所である佐原准看護学校の学生50名も特別聴講しました。
学生からは、
「人間には自然治癒力があり看護師はそれを手助けできるのだと思いました。また、看護師が本気で看護すれば6割の患者が救えるとの言葉はとても心に響きました」
「手で触れて人をみることを大切にしていきたい」
「自分が小さいころに母がしてくれたケアを思い出しました。先生の言葉を忘れないように実習でも患者様に接していきたい」
などの感想が聞かれました。

午後からは、平松則子(日本て・あーて推進協会副代表/健和会臨床看護学研究所)による 「熱布バックケアの技術~実践と普及のために~」の 講義と演習でした。
看護実践者として大切にしている指標として看護実践のキーワードが示され、手をとおして触れる・触れられることの感覚と意味について学んだ後、熱布バックケアの演習を行いました。
デモンストレーション後の演習では3名1組になり、看護師役と患者役を体験しました。参加者からは、
「(腰背部へのタオルの置き方について)相手の体形に合わせて置くことを工夫した」
「タオルが冷めて外す時のタイミングが難しい」
「熱いタオルは気持ちがいいが、絞る時が大変だった」
などの声が聞かれました。

演習中は、終始なごやかな話し声や笑い声があふれ、
「楽しそうな声が聞えたので見に来ましたよ」
と川嶋代表が思わず様子を見にくる場面もありました。
今回初めて会ったのにこれほど打ち解けて笑い声が聞かれたのは、手を用いて触れ、気持ちの良いケアを提供し合ったことで、お互いの心が開かれた状態になったのでしょう。

演習後の体験の共有場面では、
「温かいタオルを背部に2枚を乗せた後、最後に1枚熱いタオルを乗せることで蒸されたような感覚になり、お風呂に入った以上に気持ちが良いと感じた」
「直接手で行ったマッサージとマルチグローブを試した時では、患者役になってみると手で行った方がマッサージの良さが伝わってきて心地良かった」
などなど、体験時の感想をお互いに伝え合いました。


講師との語り合いの中で聞かれた、
「現場では電子カルテやデスクワークが増え、ベッドサイドケアをするのが難しくなっている。熱布ケアをするにも“あの人はやってくれるけど、あの人はやってくれない”など不満も出るのではないか?」
といった声に川嶋代表からは、
「そういうのはケチケチ平等っていうのよ。ぜひ気持ちが良いケアをやれるようにしていってほしい」 「ディスポタオルが増えていることに、危機感を持って」 との力強いお答えが。
さらに、「小児でも熱傷に気をつければ大丈夫。特にお通じを出すのにとても効果的よ」など、実践的なアドバイスももらいました。

手を使った看護のすばらしさを改めて認識することができた「佐原て・あーて塾」。
川嶋代表からも、今回のて・あーて塾はとても良い研修であったとの言葉があり、最後に一人りひとりに修了証書が手渡されました。

まだまだ寒さが残る佐原でしたが、帰りには皆、頬がほんのり赤くなり、やわらかな笑顔が見られました。こころも身体も温まったて・あーて塾になりました。

佐原で播かれた種が、参加者によって各地に運ばれ、徐々に育っていくような予感がする有意義な研修でした。

(西山みち子・記)

2019年3月15日